Local Stories and Daily Life from Nagoya
笠寺観音 六の市 ー ゆっくり流れる、名古屋の露天市

名古屋市南区・笠寺観音。
毎月、6のつく日に開かれる露天市「六の市」。
マーケットだの、マルシェだの、
おしゃれな名前の市とは違う。
地元のおじいちゃんやおばあちゃん達の
ゆるやかな社交場だ。



県内から集まったお店が並び、
野菜、果物、団子、干物、日用品。
なんでもあるようで、
だいたい渋い。
東別院や甚目寺観音の朝市が若い空気なら、
笠寺は重ねた渋さだ。
「芋が、甘いよー」
「安くするから持ってってー」
そんな声が、
あちこちから聞こえてくる。


でも不思議と、
威勢よく売りさばく市場というより、
どこか ほっとする地元のやり取り。
昔ながらの
小さな町の市、という感じ。
この六の市は、
寺の祈願日に合わせて開かれる名物市。
戦後、寺の周辺で始まり、
後に境内で開かれるようになったと言われている。
最盛期には、
今の地下鉄 桜本町駅のあたりまで
露天が並んでいたとか。
今より、ずっと活気のあった市だったらしい。

子どもの頃は、正直つまらなかった。
お祭りの屋台もない。
サメ釣りもない。
あるのは
芋、蒟蒻、干物。
渋い。
とにかく渋い。
でも気づけば今、
干し芋をかじりながら、
露天のお店の人と立ち話をしている。


野菜を買えば
「これも持ってきゃあ」と
おまけが増えていく。
普段は買わない
さつまいもも、なぜかここだと買う。
たぶん、
話して、感じて、買うから。
そんな当たり前の時間が
ちゃんと残っている場所。
今回は、春のやわらかい日だった。
空が高くて、
風が少しあたたかい。

なんとなく歩いて、
なんとなく止まる。
境内のすみで、
少し座って、ひなたにいる。
それだけでいい、と思える時間。

歳を少し重ねはじめると、
わかってくる。
こういう景色とか、
こういう匂いとか。
昔は退屈だった場所が、
いつのまにか好きになっている。
そして、
干し芋も、わりと好きになっている。
笠寺観音「六の市」
開催日: 毎月6日、16日、26日(6のつく日)
公式サイト: https://kasadera.jp