Local Stories and Daily Life from Nagoya
珈琲フランカ ー 名古屋の純喫茶記録

名古屋市昭和区にある喫茶店「フランカ」。
地下鉄鶴舞線・荒畑駅から歩いて8分ほど。
大通りから一本入った、静かな通り沿いにある。
店先の看板には年季を感じる。
けれど、窓には店名がきれいに書かれ、
外にはいくつもの観葉植物が並んでいる。
長く続いてきた店でありながら、
今もきちんと手が入れられていることが伝わってくる。

扉を開けると、
ほんのりとたばこの香りがした。
テレビ番組の音と、常連さんたちの話し声。
そのあいだにも扉が開き、
ひとり、またひとりと入ってくる。
「暑いねー」
「さっき起きて、そのまま来たよ」
そんな言葉が、挨拶のように交わされる。
別の常連さんがやってくると、
店の人がすぐに声をかけた。
「昨日はごめんねー。満席だったもんね」
昨日も来て、今日も来る。
満席で入れなかったことも、
ちゃんと昨日の続きとして残っている。
店の人たちも、
テレビを見ながら楽しそうに話していた。
画面に料理が映れば、
「おいしそー」と声が上がる。
お店の人とお客さん。
その境目が、少しだけやわらかい。
誰かはテレビを眺め、
誰かは新聞を開き、
誰かはいつもの相手と話している。

フランカでは現在、
息子さんが店主を務め、
お父さんとお母さんも一緒に店に立っている。
いつから営業しているのか尋ねると、
お父さんがうれしそうに答えた。
「昭和55年5月5日から。5555!頑張ってるでしょ」
昭和55年5月5日。
その日から、この場所で営業を続けてきた。
店名の「フランカ」は、
ブラジルのコーヒー豆の名前から取ったものだという。

キッチンには、 長く使われてきた道具や物が並んでいる。
決して物が少ないわけではない。
それでも、不思議と雑然として見えなかった。
どれも、それぞれの場所に
きちんと収まっている。
「汚いとこはカットしてよ〜」
店主である息子さんが、 冗談めかして言う。
穏やかな口調で、
店のことをいろいろと聞かせてくれた。
テレビ取材は受けないという。
「半日とか、かかるからさ」
そう言って笑う。
店内を見渡すと、
猫のグッズがいくつも置かれていた。
昔から猫を飼っていたそうだ。
帰り際には、
店のロゴと猫が描かれたステッカーを
持たせてくれた。

初めて来た店なのに、
ここにいると不思議と肩の力が抜けていく。
うれしそうに店の始まりを話すお父さん。
テレビを見ながら笑うお母さん。
冗談を交えながら、
いろいろな話をしてくれる息子さん。
三人の穏やかなやりとりが、
そのまま店の空気になっている。
昨日も来て、今日も来る。
そんな常連さんたちを、
三人はいつものように迎えている。

大きな窓から朝の光が入り、
観葉植物の葉を照らしている。
テレビの音と話し声が重なるなか、
フランカでは今日も、
いつもの朝が始まっていた。
珈琲フランカ
〒466-0051 愛知県名古屋市昭和区御器所2丁目10