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駄菓子屋「つねかわ」|そのまんま名古屋時間 Vol.4

上飯田「つねかわ」—— 駄菓子屋の記憶をつなぐ場所

名古屋市北区・上飯田。

交通量の多い国道19号線、矢田川を渡る手前。車の波の中に、ぽつんと現れる一軒の店がある。「こんなところにあった?」と、近郊に住んでいる人でさえ、ある日ふと通りかかって驚くという。

そんな話を、お母さんは本当に楽しそうに、やわらかく笑いながら語ってくれた。

青いテントに「お好み焼・やきそば つねかわ」と書かれた店舗外観。赤い自販機とのコントラストが印象的な、名古屋市北区上飯田の駄菓子屋・鉄板焼き屋。

創業は1975年。

もうすぐ半世紀を迎える、駄菓子と鉄板焼きの店だ。メディアやYouTubeでもたびたび紹介される“ノスタルジーの聖地”だけど、実際に足を踏み入れると、映像では伝わらない空気がある。

駄菓子の甘い香りと、鉄板の焦げる匂い。

あの頃の駄菓子屋の空気がそのまま残っている。小さいころ、土曜の昼に小銭を握りしめて通ったような記憶がふっとよみがえる。

今でも、そんな風景が名古屋のどこかに残っていることがうれしい。

駄菓子屋「つねかわ」の店内で鉄板を前に調理するお母さん。壁には長年の手書きメニューが残り、時代の積み重ねを感じる。

お母さんはとにかく明るくて、声をかけると笑って返してくれる。「はいよー!」「おおきに!」と、軽やかに言葉が返ってくる。

それだけで、店の中が明るくなる。

駄菓子屋「つねかわ」で提供される玉せんのクローズアップ。えびせんの間に挟まれた卵とソースの香ばしさが漂う。

焼きそばやお好み焼き、名古屋のB級グルメ「玉せん」など、鉄板の上では今日も変わらぬ音が響く。マヨネーズなしのソースだけ —— それだけなのに、思わず“うまっ”と声が出る。

「つねかわ」名物スナックロールの調理風景。うまい棒を卵でくるりと包み、鉄板の上で焼き上げる手元の様子。

そしてもうひとつの名物が「スナックロール」。最初、名前が思い出せずにいると、お母さんが笑いながら「スナックロールね!」と教えてくれた。

「うちはね、スナックロールが有名だよ!」

卵をくるりと巻いて仕上げてくれる。好きな味のうまい棒を選んで渡すと、卵のやさしさとうまい棒の塩気が、なんともいえない一体感で口に広がる。しっとりとした食感と、懐かしさの匂いが、少し笑えるほど心地よい。

名古屋市北区上飯田の駄菓子屋「つねかわ」で、スナックロールを焼くお母さんと、それを楽しそうに頬張る子どもたち。店内には手書きのメニューが並び、昭和の空気が漂う。

「つねかわ」にあるのは、長い時間の中で磨かれてきた、人と人とのやりとりと、この名古屋の地区のやさしさ。誰かの手から次の手へ、静かに受け継がれていく、語り継がれていく“まちの記憶”がここにある。

駄菓子屋が地元にあるって、やっぱりいい。そんな当たり前のことを、静かに思い出させてくれる場所だった。


つねかわ   愛知県名古屋市北区上飯田東町1-37

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Taro Hori

名古屋生まれ。 メルボルン、マニラを経て、約20年ぶりに地元へリターン。 街も、自分も、すこし変わっていて。 いまは、ローカルな手触りを探しているところ。 Tewatashi Projectでは、ハイパーローカルな日常を、そっと切りとりたいです。

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