日常の手ざわりを、そっと手渡すメディア

Local Stories and Daily Life from Nagoya

カルチャー

そのまんま名古屋時間 Vol.1|大高緑地のゴーカート

名古屋市緑区、大高緑地のゴーカート。
正式には「交通公園」らしいけど、「大高のゴーカート」でだいたい伝わる。

何年ぶりかに訪れたその場所は、びっくりするほど何も変わっていなかった。
いい意味で、ほんとうに何も。

大高緑地の売店内。昔ながらのメニューと椅子、洗面台まで、そのままの空気を残す空間。

入口にある休憩処。
年季の入ったトタンの建物も、色あせた看板も、当時のままの顔をしている。
「懐かしさ」より先にきたのは、ちょっとした興奮だった。
中では、地元のお母さんたちが変わらない雰囲気で出迎えてくれて、
なんとなく「久しぶりです」って言いそうになる。

大高緑地の売店で買ったみたらし団子。照り返す午後の日差しと、食べ終えた串が残す時間のあと。

昼ごはんは済ませていたのに、カレーかラーメンか、いや、かき氷まで頭をよぎる。
とりあえずみたらし団子4本入りを家族で分けて、最後の1本は子どもと半分こ。
味というより、時間を味わう感じ。
昔のことを思い出すというより、昔の空気がそこにいた。

券売所も、そのまま。チケットも、記憶の中と同じかたち。
「一人のり」は歩道橋を渡って向こう、「二人のり」は右に並ぶ。
順番も、流れも、ぜんぶ変わっていない。
スタッフの手つきまで、どこか懐かしい。

ゴーカートの色が選べなくて、
「えー、赤色がよかったのに…」とつぶやく子の声。
それも昔からのお決まり。
速くもないし、順位もつかないのに、気分はF1。

「車の運転って、これと一緒?」
そんな質問も、昔と変わらず、少しだけ未来に近づいた気がして、ふふっとなる。

「もう一回乗る!」と駆け出す背中。
それを見ながら、あのころの風景がすこし重なる。
変わらないやり取りに、ちょっと安心する手渡したいローカルな文化と時間。

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
Taro Hori

名古屋生まれ。 メルボルン、マニラを経て、約20年ぶりに地元へリターン。 街も、自分も、すこし変わっていて。 いまは、ローカルな手触りを探しているところ。 Tewatashi Projectでは、ハイパーローカルな日常を、そっと切りとりたいです。

  1. そのまんま名古屋時間 Vol.1|大高緑地のゴーカート

  2. ひかえめな記録:Vol.3 |この感じ、夏の入口

  3. ひかえめな記録: Vol.2|朝9時の沢上商店街

RELATED

PAGE TOP