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名古屋インターバッティング | そのまんま名古屋時間 Vol.3

名古屋市名東区上社の交差点から少し入り込んだところ。古い黄色い建物が目に入ったら、もうそこだ。

「名古屋インターバッティング」

小さいころ、35年以上前に通っていた場所に、いまは自分の子どもを連れて行っている。そのこと自体が、ちょっとした時間の不思議を教えてくれる。

名古屋市上社の名古屋インターバッティングの看板が掲げられた外観。黄色い階段を駆け上がる子どもが、時間の流れをつなぐ。

建物の中には、何もかもが昔のまま残っている。壁一面の貼り紙やユニフォーム、スツールの並ぶ休憩スペース。「ストリートファイターⅡ」などのアーケードゲームもまだ稼働していて、時が止まったような空気が漂っている。

名古屋市上社の名古屋インターバッティングで。プロ野球中継が流れる店内。子どもたちはゲーム機に夢中で、大人たちは壁に飾られたドラゴンズのユニフォームを背に過ごす。

球速は85〜135km/hで、子どもや女性向けにもう少しゆっくりな球が出るレーンもある。ただ、少し壊れ気味で、たまに球が出てこないことも。でも、それすらも「この場所らしさ」として、なんとなく受け入れられている。もちろん怒る人もいるけれど、それも含めて、ここの“味”なのかもしれない。

テレビでは、プロ野球中継が流れている。
お店のおじいさんが、その様子を静かに見守っている。
一方で子どもたちは、年季の入った単音の野球ゲームに夢中。
驚くほど真剣なまなざしで、ボタンを押し続けている。

時代が変わっても、
こういうのって、なんだかんだ大好きだよね。

平和で、懐かしい時間が、今日もここに流れている。

プロ野球中継が流れる名古屋インターバッティングの店内。年季の入ったゲーム機に向かう子どもと、ドラゴンズグッズが並ぶ壁。

階段の影、タイルのひび、洗面台の横にかかったタオル。
どれもただの風景なんだけれど、なぜか記憶の中に長く残ってしまう。
こうした空間が、街のどこかにひっそりと生きていて、
その空気を誰かが今も引き継いでいる。

派手なリニューアルも、過剰な演出もない。
でも、そんなものがなくても、ちゃんと人が集まっている。
老若男女、三世代が同じ空間を共有しているこの感じは、
どこか「まちの文化財」に近い気がする。

名古屋インターバッティングは、
いつも変わらずそこにあって、
世代をまたいで、誰かのバットの音を受け止めてくれている。

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Taro Hori

名古屋生まれ。 メルボルン、マニラを経て、約20年ぶりに地元へリターン。 街も、自分も、すこし変わっていて。 いまは、ローカルな手触りを探しているところ。 Tewatashi Projectでは、ハイパーローカルな日常を、そっと切りとりたいです。

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