Local Stories and Daily Life from Nagoya
住宅街に突如潜む、桃厳寺の名古屋大仏|ひかえめな記録 Vol.5

千種区・本山。住宅街の中を歩いていると、突如あらわれる、緑色の大仏。
桃厳寺の名古屋大仏。
その存在感は、何年かに一度、なぜか無性に拝みたくなる不思議な引力を持っている。いわゆる「名古屋の珍スポット」として語られることもあるけれど、ただの面白さでは片付けられない、妙な気配がある。

全長15m。
台座にどっしりと座り、正面に立つたび「おっと」と身構えてしまう。見守られているようで、見られているようでもあり、視線のやり場に困ることもある。日常のなかにぽっかり現れるこの風景には、ちょっとしたゾクゾク感がある。

この名古屋大仏さんの前に住んでいる人は、毎朝、玄関を出るたびにあの姿が目に入るのだろう…
そう思うと、なんだか変な想像力が膨らんでしまう。夜だったらもっと怖いのかもしれない。
とくに気に入っているのは、“どのアングルで見るか”という楽しみ方。家と家のすき間から、木々のあいだから、あるいは遠くのマンションを背景に。正面もいいけれど、真正面じゃないところに、名古屋大仏の魅力がある気がしている。


今回訪れたのは8月末の猛暑日。
草木がよく育ち、いつも見えるはずの道からは姿が見えなかった。でも、それはそれで。植物が導いてくれる、別の角度からの大仏との出会いもある。


特に後ろ姿が、いい。力強く、でもどこか寂しげにも見えるあの哀愁ある背中。見る人の気分や立つ場所によって、印象が変わるのもおもしろい。
名古屋大仏の好きなアングル、そっと心にしまっておくのもいいけれど、誰かと語り合うのも、きっと楽しいはず。