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住宅街に突如潜む、桃厳寺の名古屋大仏|ひかえめな記録 Vol.5

千種区・本山。住宅街の中を歩いていると、突如あらわれる、緑色の大仏。

桃厳寺の名古屋大仏。

その存在感は、何年かに一度、なぜか無性に拝みたくなる不思議な引力を持っている。いわゆる「名古屋の珍スポット」として語られることもあるけれど、ただの面白さでは片付けられない、妙な気配がある。

名古屋市千種区・桃厳寺の名古屋大仏。住宅街のマンションと墓地を背景に、緑の大仏が木々の間から姿を現す風景

全長15m。

台座にどっしりと座り、正面に立つたび「おっと」と身構えてしまう。見守られているようで、見られているようでもあり、視線のやり場に困ることもある。日常のなかにぽっかり現れるこの風景には、ちょっとしたゾクゾク感がある。

名古屋・千種区の桃厳寺。松の木の枝越しにのぞく名古屋大仏の後ろ姿が、住宅街の中に溶け込む印象的な景色

この名古屋大仏さんの前に住んでいる人は、毎朝、玄関を出るたびにあの姿が目に入るのだろう…

そう思うと、なんだか変な想像力が膨らんでしまう。夜だったらもっと怖いのかもしれない。

とくに気に入っているのは、“どのアングルで見るか”という楽しみ方。家と家のすき間から、木々のあいだから、あるいは遠くのマンションを背景に。正面もいいけれど、真正面じゃないところに、名古屋大仏の魅力がある気がしている。

名古屋市千種区・桃厳寺の名古屋大仏が住宅の屋根越しに見える風景。緑色の巨大な後ろ姿が日常に溶け込む瞬間
名古屋市千種区・桃厳寺の名古屋大仏。墓地とマンションを背景に、緑の大仏が存在感を放つ風景

今回訪れたのは8月末の猛暑日。

草木がよく育ち、いつも見えるはずの道からは姿が見えなかった。でも、それはそれで。植物が導いてくれる、別の角度からの大仏との出会いもある。

千種区の桃厳寺にある名古屋大仏。青空の下、緑に囲まれた巨大な後ろ姿が静かに佇む風景
千種区・桃厳寺境内にある名古屋大仏の後ろ姿。住宅街の道路標識越しに見える、日常と非日常が交差する光景

特に後ろ姿が、いい。力強く、でもどこか寂しげにも見えるあの哀愁ある背中。見る人の気分や立つ場所によって、印象が変わるのもおもしろい。

名古屋大仏の好きなアングル、そっと心にしまっておくのもいいけれど、誰かと語り合うのも、きっと楽しいはず。

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Taro Hori

名古屋生まれ。 メルボルン、マニラを経て、約20年ぶりに地元へリターン。 街も、自分も、すこし変わっていて。 いまは、ローカルな手触りを探しているところ。 Tewatashi Projectでは、ハイパーローカルな日常を、そっと切りとりたいです。

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