Local Stories and Daily Life from Nagoya
名古屋たこ焼きの記録|熱田区・吉川屋という証明

名古屋風たこ焼き?
知っていますか。
ローキーな名古屋名物。
そもそも、それを名古屋の人は
どれくらい自覚しているのか。
実は、名古屋には、独自のたこ焼き文化がある。
そしてそれを、50年以上、証明し続けている店がある。
名古屋市熱田区青池町。
野立小学校の前。
日比野駅から徒歩だと15分ほど。
正直、住んでいないと通らないロケーションにある。
「吉川屋」。

創業昭和47年の文字とともに、
今も変わらず、そこにある。
3月の暖かさの前の寒空の下。
いつ来ても、列ができている。
住宅街の一角。
観光地でもない。
急に、この列?
初見は少し戸惑う。
老いも若きも、震えながら順番を待つ。
店に近づくと、先に届くのは醤油だしの匂い。
正直に言えば、通るたびに必ず買うわけではない。
でも、近くまで来たら一度は様子を見る。
列が短い。
あ、今日は少なめだ。
その瞬間、ほぼ確定だ。
財布に手が伸びる。
寡黙な職人たちが、淡々と、黙々と焼き続ける。
5個から、5個刻みで買える。
変わらない仕組み。
子どものころは5個で十分だった。
紙舟を両手で持つと、それだけで熱かった。
大人になれば、20個を迷わず頼める。
それだけで、少し背が伸びた気がした。
近くの野立小の子どもたちが、
列の後ろでこそこそ言う。
「大人になったら100個買ってやるでな。」
本気とも冗談ともつかないその誓いが、
この店にはよく似合う。

名古屋風たこ焼きには、条件があると言われている。(諸説あり)
鉄板に流した生地に醤油を垂らして焼くこと。
直径4センチほどの小玉。
具材にキャベツが入ること。
外はやわらかく、中は熱い。
大きく刻んだキャベツが入り、噛むと軽い音がする。
だしがちゃんと効いている。
ソースでまとめない。
某チェーンの、外カリなんて概念はありません。
輪郭は、最初から“だし”でできている。
派手ではない。
写真映えもしない。
「名古屋めし」としても、
正面から数えられているわけではない。

地元にその店がなければ、
そもそも知らないまま通り過ぎる味だ。
全国区でもない。
観光名物でもない。
ソースではなく、だし。
小玉で、キャベツが入っている。
外カリを競わない。
それが、この街のやり方。
一度それが生活に入り込むと、
ただのたこ焼きではなくなる。
知らなくてもいい文化かもしれない。
でも、知ってしまうと手放せない。
名古屋には、こういう味がある。