Local Stories and Daily Life from Nagoya
名古屋純喫茶記録クラブ – 和

名古屋純喫茶記録クラブは、
名古屋の街にひっそりと佇む喫茶店を、
いまのうちにそっと記録しておく、勝手な活動です。
特別なことはしません。
扉を開けて、座って、
出てくるコーヒーを飲むだけ。
その時間を、少しだけ残します。
ひと区画歩けば緑区という、天白区のはしっこ。
鳴子北駅と相生山駅の真ん中あたり。
車通りの多い道沿いに、その喫茶店はあった。
純喫茶「和」。
看板の風合いから、長い時間が感じられる。

扉を開けると、テレビではワイドショーが流れている。
金魚が静かに泳ぎ、タバコのにおいが店内に漂う。
全席喫煙可というのも、今では珍しい。

どこか生活の延長のような、
気取らない喫茶店の空気がそこにあった。

キッチンの様子は、
どこかおばあちゃんの家に来たような
あたたかさがある。
タイルの質感、年季の入った棚、使い込まれた道具。
「古いだけだから。今はレトロ?って
言葉もあって便利だけどさ」
そう言って笑うマスターの様子に、
こちらの肩の力も抜けた。

少し怖い雰囲気かと思ったマスターは、
話しかけてみると笑顔でラフに話してくれた。
お父さんが始めたこの店は、
もう40年、50年と続いてきたそうだ。
「個人店って入りにくいでしょ。
チェーンならメニューもわかってるけどさ」
2011年に桜通線・鳴子北駅が開通してからは、
このあたりの人の流れも変わったという。
分離帯ができてからは、反対側から少し入りづらくなった。
信号もできて、青になれば車はそのまま通り過ぎていく。
「昔はもっと入りやすかったんだけどね」
マスターは、どこかあっけらかんと言う。
店内にはたくさんの緑や置物、
そして鹿やカメの縁起物が並ぶ。


目についた松ぼっくりとカエルの置物について尋ねると、
「かわいいから買ってきた」とマスターは言う。
置物は統一感があるわけではない。
けれど、その雑多さが、
この店の時間をそのまま残しているようだった。

コーヒーを飲みながら、
金魚の動きをぼんやり眺める。
天白のはしっこで、
今日もこの店は静かに営業している。